「今年のクリスマスプレゼントはどうしよう?」
25歳のゆたかくんは ため息をつきました。
世の中はクリスマスムード一色。
街はうきたつような空気に包まれています。
でも ゆたかくんの目下の悩みは、 優子とまっきーとすんちゃんへの クリスマスプレゼントが きまらないことなのです。

部屋に飾られたクリスマスツリーを眺めながら、 ゆたかくんは 25回目のため息をつきました。
ゆたかくんは、 優子とまっきーとすんちゃんへの
プレゼントを選びにコートをはおると、 楽しそうに出かけて行きました。

ポケットには、 サンタクロースからの手紙が入っています・・・ そろそろたくさんのプレゼントが、
きれいに包まれて、いろんな国に旅立つところじゃ。 サンタクロースのプレゼントというもんは、
ただおもちゃを包んでいるだけではないぞ。
その中には、 夢だの、希望だの、感謝だの、愛情だのといった 気持ちがいっぱいつまっとる。

子供たちは、プレゼントをあけたとき、
その気持ちも一緒に受取ることになるんじゃ。
もちろん、ゆたかくんや 優子とまっきーとすんちゃんへの プレゼントにも入っておるとも。 わしは空をひとっ飛び。 ヨーロッパ、アメリカ、アフリカ、アジア、
そして 御殿場にもプレゼントを届けにいくぞ。 プレゼントを待っとる子供たちは世界中におるからな。

そうじゃ、忘れておった。
わしがこんな手紙を書いたのは、理由がある。 プレゼントが無事おまえさんへ届くには、 ひとつ条件があるからなんじゃ。 それはクリスマスの朝に、ひと言こういえばよい。
つけくわえるなら、できるだけ明るく、楽しくやってくれ。 ゆたかくんは、いそいで最後の紙をめくりました。
そこには・・・ メリークリスマス!

さあ、いよいよ出発じゃ。 わしはおなじみの赤い服を着る。
北極の空の凍るような寒さも気にならんような、 完全防寒仕様じゃ。 プレゼントをつめた大きな袋をソリに乗せ、 たくさんの子供たちに会えるのももうすぐじゃ。
外はもう、しんしんと雪がふっておる。
ゆたかくん、おまえさんへのプレゼントは、 小泉優子にあずけておいた。 ま、楽しみにしておれ。

クリスマスの前には、 たくさんのおもちゃを作る仕事がわしを待っておる。 家では、一日中にぎやかな音がしているが、
それはおもちゃを作る音なんじゃ。 こんどは隣町にできた
大きなおもちゃやさんかな?
と ゆたかくんは考えました。

そして子供のころ、目が覚めると、 きまって枕元に置かれていた プレゼントのことを思いうかべました。 昨夜までなかったおもちゃが、朝そこにあるのは、 とても不思議で、魔法のようでした。 ゆたかくん、 おまえさんはもうおもちゃで遊ぶ子供ではないが、
今回のクリスマスには、 特別にプレゼントをあげることにしよう。 はてさて、何だと思うかね?

この手紙を最後まで読んでくれればわかるが、
それはまだ秘密じゃ。 めざす家に到着すると、さあ仕事じゃ。 エントツから、といいたいところじゃが、
近頃はエントツのない家が多いから大変じゃ。 なんとか家に入りプレゼントを置いたら、
すぐ次の子の家にいかなきゃならん。 プレゼントのリストは、 子供たちの名前でいっぱいじゃ。

こんどは警備会社のパンフレットかな? と ゆたかくんは思いました。 『サンタクロースも入れない防犯装置』じゃ、
サンタクロースがかわいそうです。 目のまわるような夜を過ごして、 クリスマスの朝に帰ってくるころは、
もうへとへとじゃが気分はそう快じゃ。

この一夜のために、一年を過ごしておるからな。 わしは妻に子供たちの様子を話してやる。
あの子は今年もいい子にしておったよ、
というと、妻もとても嬉しそうじゃ。

そうそう、わしは ゆたかくんの、子供のときの
寝顔を見たこともあるんじゃよ。 結婚案内のパンフレットだったのか、 ゆたかくんは思いました。
でもサンタクロースにもおくさんがいるなんて! ゆたかくんはちょっとばかり想像してみました。 もし自分がサンタクロースの国に行けたら!

なんてわくわくする光景なのでしょう。
そうか、これは旅行会社のパンフレットなんだ!? 『冬休みはスキーをかねてサンタクロースの国へ!!』 こんなキャッチコピーがうかびました。
みんながわしに手をふってくれておる。

いよいよ出発じゃ。
忘れ物はないかな? それからわしは、トナカイたちに、 「さあ、行こう!」と声をかける。 するとそりはあっというまに空の上。 空気は冷たいが、とてもよい気持ちじゃ。
いちど乗せてやりたいくらいじゃよ。 この手紙は航空会社のパンフレットかもしれない!?
ゆたかくんは考えました。 北欧の空を遊覧飛行する会社なのです。 でも、ゆたかくんは高いところはちょっと苦手です。 ゆたかくんは、信じられない、と思いました。

サンタクロースなんて架空の人物で、
そんな話はとっくに卒業したはずなのに・・・ でも手紙には・・・ サンタクロースなんているもんか、 と思っておるじゃろう。 サンタクロースを見たかったら、
クリスマスイブにサンタクロースの国にくるとよい。 世界中の国々に飛び立つサンタクロースのソリを、 一般公開しておる。

ゆたかくんは、またわからなくなりました。 どうやらこれはケーキ屋どころではなさそうです。 もしかするとフライドチキンの店かもしれない!?
ゆたかくんの脳裏に、小太りで、 めがねをかけ、いつもニコニコして町角に立っている、 とあるおじいさんの姿がうかびました。

わしはみんなの視線を浴びながらソリに乗り込む。 まるでスターになったきぶんじゃ。あたりは大騒ぎさ。 みんなの寝顔を見るのもいいが、 幸せそうな笑顔を見るのは、
もっといいもんじゃよ。 サンタクロースの国は今 クリスマスプレゼントの準備で大忙しじゃ。 なにしろ、世界中へプレゼントを運ぶんじゃからな。 ゆたかくんはどんなプレゼントをお望みかな? サンタクロースの国、特製クッキーはどうじゃ。
もみの樹の形をしていて、 それはそれはおいしいクッキーじゃよ。 ゆたかくんはやっぱりそうかと思いました。

これは最近、近所にできたケーキ屋の、
ダイレクトメールに違いありません。 でも手紙の文章はまだまだ続きます。
プレゼントの用意ができると、 こんどはトナカイたちの準備をしなきゃならん。 金の鈴がついたひもを、一頭一頭つけていくんじゃ。 これがあの有名な 「ジングルベル」という曲になるんじゃよ。

幼い頃、クリスマスの朝には、
プレゼントがいつも枕元に置かれていました。 でもゆたかくんは、もう自分でプレゼントを
探しにいかなければならないのです。

『電話一本、30分でお届け』してくれる、 ピザ屋みたいなサンタクロースはいないかなあ。
プレゼントのことを考えすぎて、
ゆたかくんの頭はオーバーヒート気味! そのときでした。 郵便受けがコトリ、と小さな音をたてたのは。

2005年12月25日
メリークリスマス
小泉優子より